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珍しく、宿に戻ってきたのが深夜だった。
それでも、汚れを持ち込まないように清めてから戻る。
窓から忍び込むと、リュートが荷物からうす茶色の液が入ったガラスの小瓶を取り出していた。
「…悪い、今日はもう眠らせてくれ」
ばつが悪そうな顔をして、ふた口ほど小瓶の液体を飲む。
そういえば一日中調子が悪そうな気配だった。
「いい子だから、一人でできるな?」
自分の頭を手荒に撫でて、寝台に突っ伏す。
ほんの少しアルコールの匂いがした。
夜行の服は密着するように作られていて、一人で脱ぐのは大変だ。
紐で締めている場所を一通り緩めないと脱げない。
悪戦苦闘すること暫く、やっとすべての紐を緩めることが出来た。
「ふぅ…」
窮屈な服を脱いで一息つくと、静かな寝息が聞こえる。
リュートが自分より早く寝ることはめったに無い。
興味本位で近づいたときだった。
「ううっ…ぁ」
リュートが急に苦しそうな表情になり、呻く。
一瞬、起きたのかと思ったがそうではなかった。
眠ったままだ。
「う…あ……」
何かをこらえるように頭を抱え、うなされている。
たまらず、起こそうと手を伸ばすと痛いほど強い力で手首を掴まれた。
「リュート?!」
「…師匠……も、…ムリ……ごめ…な、さ……」
はっきりと聞こえた。
背筋が凍る。
「…や、だ……われ……」
「っ、リュート!」
肩を揺さぶってムリヤリ起こす。
「あの場所」の記憶は自分も辛い。
お願いだからそんな場所に囚われないでくれ!!
投稿者 ryifb4 | 返信 (0) | トラックバック (0)