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とんっと軽く屋根を蹴って飛び降りる。
下りる間にスカート裾の金具をいくつか外し、ワイヤーの束を一つ取り出す。
裏口の目の前に飛び降りると、引き戸のちょうつがいを外しにかかる。
まだ薄い金属の加工までできないのか、厚手の丈夫な皮製だった。
「やっぱアナログも大事よね~」
急ぎなのだが、このクラスの文明には感心させられることが多い。
単純構造なのと、天然素材特有の弱点をついてすぐに開けてしまう。
進入すると思ったより暗い。
少し体勢を屈めるだけで影に隠れてしまう。
そーっと廊下を伺うと、多少明るいだけだった。
「さて、下調べだともうちょっと奥に地下室の入り口があるみたいね」
ステルスをかけてから廊下に出て行く。
目的の部屋までは余裕で入れる。
問題はここからだ、地下室の扉の位置を探すのがめんどくさい。
ところが思案は爆発音に打ち切られる。
「なにやってんのーーーーーーーーーー!!!!」
思わず大声を出してしまう。
地下室の入り口を見つけたら合図をして、上で注意をそらす予定だったのだ。
それにこちらに向かってくる足音がする。
「もー!!」
仕方がなく天井にワイヤーを投げつけ足場を作り、飛び乗る。
そのまま息を潜め様子を伺う。
まもなく、一人が駆け込んできて床の一部を叩いた。
「敵襲だ、全員出せ!!」
すると、床の一部が持ち上がりぞろぞろと私兵が出てきた。
「…ラッキーv」
最後の一人が出た後、すぐ閉まったのでかなり用心深い。
何か合言葉とかあるのだろう。
しかし、入れるチャンスはすぐに来た。
また一人、駆け込んできたのだ。
何か物を探している気配で、そちらこちらの木箱を探している。
見つからないと判ると、地下室の扉を叩いた。
「捕縛用の網はあるか」
「あるが、どうした?」
「爆弾を投げ込まれて網が使えなくなった」
…なるほど、これを見つけたからフェイトは動いたのね……
チャンスはコチラにも回ってきた。
ステルスを解いて、網を取りにきた人の真後ろに飛び降りる。
「お兄さんゴメンねv」
ワイヤーを引っ掛けて、飛び降りた勢いで相手を天井まで飛ばして張りつけた。
少し間があって、地下室の戸が開いた。
結構大きな網のようだ、大人三人がかりで引きずりながら運び出そうとしている。
「それ使わせるわけにはいかないのよねぇ…」
無属性の刃を足に纏わせて無造作に網を踏んで地下室に入る。
困惑の声が聞こえるまで一分以上かかった気がしなくもない。
そのくらいあれば、第一目的のリュートのマントに仕掛けた発信機までたどり着いた。
「倉庫ね、ココも」
内部は油断しすぎで、網を取り出した後の倉庫のドアが開けっ放しである。
位置を知らせるように発信機に音を鳴らせさせ、それを頼りに見つける。
「よし、服も揃ってるわね…ってことはあらら」
何か余計なことに気がついてしまったが、それは置いておいて。
マントに服を包み出ようとした時に、ようやっとさっきの三人が倉庫に侵入者を捕らえに来た。
「鈍感。」
あんまり余計な殺生はしたくないのである。
三人が倉庫に入った瞬間、扉の近くに潜めていた月唯はひらりと倉庫を出て扉を閉める。
そして扉にワイヤーを張り巡らせ固定し、閉じ込めてしまう。
倉庫が通路の中ほどにあったので、本人は一番奥だろうと目星をつける。
迷わず一番奥の扉を目指し、一応用心しながら扉を少し開けた。
投稿者 ryifb4 | 返信 (0) | トラックバック (0)