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ryifb4

801-900

823.7

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とんっと軽く屋根を蹴って飛び降りる。

下りる間にスカート裾の金具をいくつか外し、ワイヤーの束を一つ取り出す。

裏口の目の前に飛び降りると、引き戸のちょうつがいを外しにかかる。

まだ薄い金属の加工までできないのか、厚手の丈夫な皮製だった。


「やっぱアナログも大事よね~」


急ぎなのだが、このクラスの文明には感心させられることが多い。

単純構造なのと、天然素材特有の弱点をついてすぐに開けてしまう。


進入すると思ったより暗い。

少し体勢を屈めるだけで影に隠れてしまう。

そーっと廊下を伺うと、多少明るいだけだった。


「さて、下調べだともうちょっと奥に地下室の入り口があるみたいね」


ステルスをかけてから廊下に出て行く。

目的の部屋までは余裕で入れる。

問題はここからだ、地下室の扉の位置を探すのがめんどくさい。

ところが思案は爆発音に打ち切られる。


「なにやってんのーーーーーーーーーー!!!!」


思わず大声を出してしまう。

地下室の入り口を見つけたら合図をして、上で注意をそらす予定だったのだ。

それにこちらに向かってくる足音がする。


「もー!!」


仕方がなく天井にワイヤーを投げつけ足場を作り、飛び乗る。

そのまま息を潜め様子を伺う。

まもなく、一人が駆け込んできて床の一部を叩いた。


「敵襲だ、全員出せ!!」


すると、床の一部が持ち上がりぞろぞろと私兵が出てきた。


「…ラッキーv」


最後の一人が出た後、すぐ閉まったのでかなり用心深い。

何か合言葉とかあるのだろう。

しかし、入れるチャンスはすぐに来た。


また一人、駆け込んできたのだ。

何か物を探している気配で、そちらこちらの木箱を探している。

見つからないと判ると、地下室の扉を叩いた。


「捕縛用の網はあるか」

「あるが、どうした?」


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829

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窓が突風でびりびりと震える。


あの二人は普段から得体の知れない存在だ。

まさかラウドを起こして、50人強もの手練の相手をたった3人で捌くなど正気の沙汰か。

それよりも強制的に起こされたラウドの体力が気になる。

10分以上の戦闘は考えていない。

だから長期戦は自分がコントロールしないと持たないのだ


「早くしないと…っ」


廊下の角を曲がればすぐだというのに、運悪く玄関先に私兵数人と術士一人がいた。


「なっ、どうやって拘束を解いた?!」


声に聞き覚えがある、薬を使った術士だ。


「悪いな、こっちの支援者はお前たちよりも有能でな!」


二人同時に同じ構えで術を作り出しはじめる。

もしかしたらこいつは「換え」の術士か?


その術は窓の破壊音で中断してしまう。

続いて聞こえた扉の破壊音。


「うわっ」


飛び込んできた白い影に、一瞬で私兵がなぎ倒される。

重装備の鎧を装備していたのにもかかわらず、子供のように軽くあしらわれた。


「なに…?」


術士が驚きの表情のまま固まっている。

いつの間にか、わき腹を深々と一閃されていた。

飛び込んできたのは一人ではなかったのだ。

見知った影に思わず駆け寄る。


「あれほど勝手に出るなと言っただろ!!!」


感情のまま叱ったはずだが、行動は裏腹に抱きついてしまっていた。


「うん、ごめんなさい…でも」

「言い訳は後で聞く、無茶するな…!」


「っが…それが術か」


術士はわき腹から出血があるものの急所が外れていたようだ。

傷口を押さえ、呻いている。


「知った所で何ができる?」


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805

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少し、試してみたいことがあった。




一つは、教えてもらった体術がどこまで通用するのか。

もう一つは…


「いらない、なくても大丈夫」


リュートの術を拒むこと。

どうしても、自分でどこまでやれるか試したかった。



逃げ出した最後の一人を追いかける。

しばらく走って、追いついたところで致命傷を与えた。

教えてもらったとおりに、勢いを殺さずにそのままぶつかって行く感じで。


手ごたえは…深い。

今までに無い深い感触。

少し角度を変えただけなのに、うっかりしたら骨に突き刺さって抜けなくなりそうだ。


そして、生々しい感覚が手に残る。

今まではずーっとリュートの術にかかっててよくわからなかった。

やっと、自分がやっていることを理解できた。

フェイトが漏らした「価値観なんて、人様々だ」ということもなんとなくわかった。

いろいろぐるぐると考えてみるけど、やっぱり行き着くところは一つだけ。




自分のセカイの中心はリュートしかいないということ。




「終わったか?」


ざり、と聞きなれた足音が止まる。


「うん、終わった」

「そうか…」


不意に頭を撫でられる。

普通ならすぐ何かされて眠くなったりすることがあるけど、今日はそんな気配が全くない。

なんか変だけど、しばらくこのままでも悪くはないと思う。

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823.4

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最近は赤い色が好きになってきた。

まだ怖い気がするけれど、別の思いが和らげる。



そんな静寂を破る来客。



「落ち着いて聞けよ」


いつもより真剣な顔のフェイトから出た言葉は信じられなかった。

思わず「飛び起きた」ところを押さえつけられる。


「だから落ち着けって!」

「でも!!」


「ほんと起きた…」

「こうもうまくいくとは思わなかったのぅ…」


リュートが捕まったということが信じられない。

でも、近くに気配がまったく無い。


「落ち着け、今から助けに行くから手伝え」

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823.1

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ふっと眠りから醒めて…意識を失う前に何があったか思い出し飛び起きる。


「んぐっ!!」


ぎりっと皮の軋む音。

冗談じゃない。


「ぐっ!…むうっ!!」


暫く暴れてみても緩む気配すらない。

ご丁寧に主要な関節を固定し、目隠しと猿轡まで噛まされている。

無傷で捕まえる気なのか。

よっぽど注意深く気配を探らないと逃げられないか。


動きを探るため意識を集中して、程なく。

複数の足音が近づいてきた。

足音はすぐ近くまで近づいて止まる。


「こいつが探していた二人の内の、術士か?」

「はっ、間違いありません」

「こいつが…術を二つも葬ったヤツか」


厄介なのに捕まった…

随分前にやりあった同類を裏で支援しているヤツららしい。

最近のひんぱんな襲撃もこの支援者の仕業か。


「ええ、もし同じ計画の行方知れずの術だとしたら一番完成に近い」

「術士がいるのなら、術もこの街のどこかにいる。急いで探せ!」


甘いな。

悪いが、何もなければ隠し通せる自信はある。

ラウドがそう簡単に勝手に出てくるわけが無いし、今は「3人」で旅をしているのだ。

やつらが「二人組」に目が向いている限り見つからない。


問題はやはり…


「術士はどうしましょうか?」

「再調教だ、早朝にその場がある街に移動する」


術を扱う「術士」に替わりはいない。

対になる術士がいれば、術は手足のように扱える。



朝までに何とかしなければ…


「了解しました、では念のため逃げられないよう『香』を焚いておきます」


言い終わらないうちに重い樹脂の匂いがする。

催眠術用の樹脂の匂い。


continue ...

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801.5

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極々弱くしたカンテラの光が目に入る。

窓の外はまだ白みもしていない。


あの後結局、衝動に流されて見られてしまった。

溝は埋まったかもしれないが、あんな姿を見られたのは正直言って…



考えても収まらないので軽く水を被ってくることにする。

起こさないように静かに部屋を出てドアを閉めたときだった。


「夜中はお楽しみでしたね」


心臓にものすごく悪い、とんでもないセリフが飛んできた。

本当に嫌なタイミングで。


「ユイ…いつからそこに居た」

「フェイトが戻ってきてすこしたった後かしら?そこからずーっと」


ということは、まさかとは思うが。

嫌な予感がする。


「………聞いたのか?全部」

「ばっちり☆」

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801.4

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暫くその場に立っていた。

部屋に微かに苦しげで泣きそうな吐息。


ああ、こいつは感情を正確に表現できないんだった。

狭い世界で過ごしているから無くなる事には敏感だ。


ラウドの世界の中心は自分なのだ。


「気がつかないとでも思ったか?」


ぎゅっと力を入れてつぶった目じりににじんだ涙を拭いてやった。


と、突然拒むように腕を突き出してきた。

しかし、それほど衝撃はない。

ラウド本人も何をしたのかわからず混乱しているようで、目を見開いて固まっている。

ただ、無意識なのか自分の服をしっかりと握り締めて離さない。




寂しくて、居なくなるのが怖くて。



そんな声がしたような気がする。

気がつけば肩を掴んで、押し倒していた。

必然的に見下ろす形になる。


「俺はお前の傍から離れないし、お前を置いていかない」


だから心配するな。と、頭を抱きかかえるようにして撫でながら言った。

ゆっくりと服を掴んでいた手の力が抜けていく。


「…ほんと、に?」


泣きそうなかすれた声で問いかけてくる。


「ああ、最期まで傍に居る」








落ち着くまで暫く肩や背中を撫でていた。

かなり長い時間そうしていたような気がする。

いつの間にか、腰に腕をまわされて離さないように抱きつかれていた。


その手を、体温を妙に意識する。

気づかれないように押さえてはいるが、正直耐えられる自信は無かった。


continue ...

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823.3

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「反対、制御がきかないに一票」

「…そこまで話がわからないやつではないと思うが」


飛び込むまでは決まったが、ここにきてからひと悶着が起こる。

何を隠そうラウドの扱い。

忍び込むまでの時間稼ぎに暴れてもらおうかと思ったが、どうもリュートの事しか聞かないフシもある。


「騒ぎを屋敷の敷地内で収められるなら戦力だけど…暴走したら救出どころの話じゃなくなります」

「暴走する前に助け出せばいいだけの話だろ、後はリュートに任せれば収まる」


お互い一歩も譲らず。

万が一のこともあるが、位置を掴んでいる分ステルスで姿を消せるこちらが有利でもある。

そんな二人に割って入ったのは…


「本人に聞けば一番いいであろう?話が解らぬ相手でもあるまい」


パンドラだ、思ったより分析していたらしい。


「今までの行動から考えて、ラウドが言うことを聞くのはリュートしかいないと思ったのだが、最近変わったの」

「変わったかしら?荒れてたけどそれが落ち着いたくらいにしか見えないんだけど」

「そういえばこの前の満月以降から比較的おとなしいな」

「そのもっと前からだ、攻撃の仕方が変わってきた辺りからかの?」


攻撃の仕方…ものすごく思い当たる。たしかに教えた。


「気にかけてる事が伝わったのではないか?」

「いや…同じ匂いを嗅ぎ取ったんだろ」

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804

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落ち着いてみると、やはり周りが見えてくるものだ。

そうすると前とは違うものが見えてくる。



たとえば、今やりあっていた暗殺者と術士は明らかに自分達を狙っていた事。

4人いたのだが、一人逃がしたのでラウドを追わせている。


「火消しに動いてるのか、邪魔なのか…両方かもしれないな」



たとえば、ユイとフェイトが予想以上に使える存在だったこと。

今も人払いの術をかけて人の目を完全に避けている。

その他にも子守や怪我の治療など小さなことから、逃走経路の確保まで何でもやってのける。

ただ油断していると、ユイに弱みを握られてしまうのが怖いところだ…



一番目に付いた変化はラウドの戦い方だ。

受身型の攻撃が一変していた。

素早く、鋭い一撃が相手を一瞬で倒した時は戦慄が走った。

それと同時に頼もしくも感じた。



少し、自分が弱くなったのかと錯覚するくらいに。

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823.2

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「ちょっとお兄さん、おつかい頼まれてくんない?」


本に偽装させた端末を弄っていた月唯に声を掛けられる。

最近、リュートが出かける間の子守中はいつも弄っているのだ。


「買い物だったら自分で行けよ…」

「残念ながら、お買い物ではありませんのよ」


手招きされて覗き込んだ端末には注意のアラートが点滅していた。

戦闘任務の作戦に使うフィールドマップを応用して、買い物に出たリュートを追いかけていたらしい。


「…いつのまに仕掛けた?」

「行水中にこっそりとマントに仕込みました」


そういえば、「野暮用だ」と言って出かけてかれこれ一時間半は過ぎた。


「30分前からぴたりと動かないのよねぇ…列ならじりじり動くはずなのに」

「だから行って来いと」

「そーゆうこと」




ステルスをかけてから窓を飛び出す。

やはり市場のような混雑した場所で探す場合は上から探した方がいい。

しかし、月唯から指定された所は市場から離れた場所だった。


「何があると言われれば…公園、民家、宗教施設…人気無いな」

『うーわー、やられた。絶対捕まってる、見た目より抜けてるから』

「まだそうと決まったわけじゃないだろ、近くまでナビしろ」


文句を言いながら反応がある場所まで屋根伝いに飛んでいく。

反応が一番近くなったところで足を止めた。


「そこそこ広い…商人系の家か」

『フェイト、その家の高さどのくらい?』

「二階建てだ、5mって所だろう」

『…なんで10mも…地下室かぁ』


外から見ても手伝い以外の気配はない。

ただ、屋根から玄関を覗き込むと人の出入りはひっきりなしに続いている。


「くさいな、やっぱり」

『理由は何にしろ、飛び込みますか』

「今の時間は人が多すぎて騒ぎになる、深夜か朝方だな」

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801.3

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冷静になってみると…まずいことをした。

極力、ラウドの前では見せないようにしていたのだが。


「っは…」


頭から冷たい水を被り、気分を鎮めようとする。

しかし、そんなことで治まるものでは無くなっていた。

気を抜くとふいっと意識を持っていかれる。


「おい、風邪引くぞ」


声がして、またぼーっとしていたことに気がつく。

相手の顔が満月の陰になりよく見えない。


「おい、聞こえているのか?」

「え、ああ…」


満月というものは狂わせる力があるというが…本当なのだろうか。

銀髪の相手は視線が自分に向いてないことに気がつき、振り返って満月を見上げる。


「…すっかり忘れてたな」

「何を…」

「こっちの話。お前の不調の原因に心当たりがあるだけ」


急に風が吹き、濡れた体から体温が急激に奪われる。

それと同時に一気に思考が覚めた。


「………頼むから、ある程度の不調は言ってくんねぇかな」


普段の態度から想像できないルビーの輝き。


「こっちは仕事なんでな」


熱が一気に収まり、酔いが醒める感覚。

それとほぼ同時に風が止む。


「治まっ…た?!」

「いや、応急処置だ。短くて二時間くらいしか持たない」


例えるならバケツの容量を一時的に増やしただけだとフェイトは軽く説明した。


濡れた髪はそのままで宿へ戻る。

当然表も裏も開いてないので、窓から進入する。


「ったく…少しは考えろ」

「先が残り少ないヤツに言って何になる」

「誰が後先の事と言った」


何を言いたいのか分かっている。


continue ...

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801.2

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汚れを落として宿に戻っても、冷たい感覚が取れない。

寝台の端に力無くへたりと座る。


「顔色わるいぞ、何かあったか?」


窓から入るのを手助けしてもらったフェイトに声を掛けられる。

答える気力もなく、首を横に振る。

相手は何か感じ取ったのか、無言で窓から出て行った。


「………っ!」


今までに数回ほど衝突したことはあったが、「逃げたい」などと思うことはなかった。

自分のセカイはリュートが中心だから。

でも、今度は違う。


離れたい。


あれだけ傍にいたかったのに、今は離れたい。

距離が、欲しい。

ただ、離れたい。



ガタンと窓の開く音がした。


「ったく…少しは考えろ」

「先が残り少ないヤツに言って何になる」

「誰が後先の事と言った」


びくりと声のする方向を見る。

丁度窓からリュートが入って来る所だった。

ぐっと胸が締め付けられる。

離れたいのに体が思うように動かない。


「はぁ…分かっているよ」


窓に向かってため息をついている。

気づかれたくなくて足元に目を向けた。

気づかないで欲しい、お願いだから、気がつかないで。



「気がつかないとでも思ったか?」


目じりに何か触れる。


触るな!!



突き飛ばそうとするも、寸での所でブレーキがかかる。

結局ポン、と軽く押し返す形になる。


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801.1

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いつものように。

目の前がはっきりしてくると、とっくにこと切れた死体。

何も感情が動くことは無い。


でも違和感。


いつもいるはずのリュートがいない。

こういうときは必ず傍にいるはずなのに。


廊下に出て気配を探す。

微かな風の流れを感じてたどっていく。



暗闇の中、床に座り込んでいる見知った背中を見つける。

近づいて呼ぼうとしても、声が出なかった。


異様な雰囲気。血の臭い。


「リュ…ト?」


緊張してかすれた声で呼ぶと、ゆっくりと振り向いた。

何かをすする音。

何度も見慣れた行為だ、口の周りが真っ赤になっている。

目を合わせると少し笑ったような気がした。


しかし、自分は冷たい手で心臓を掴まれた感覚に陥りへたり込む。


怖い。


恐怖心がこみ上げてきて体が小刻みに震える。

震えを押さえようとして肩を抱くようにするが止まらない。


頬にぬるりとした感触と鉄の臭い。

俯いた顔を上げられ、合わせた視線には明らかに狂った色を乗せていた。


怖くて怖くて声が出ない。


「寒いのか?」


震える体を抱きしめられ、酷くやさしく背中を撫でられる。

狂気に中てられ動けない自分は、なされるがまま。

首を振って答えるぐらいしかできなかった。



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