801.2 |
返信 |
本線 801-900 |
汚れを落として宿に戻っても、冷たい感覚が取れない。
寝台の端に力無くへたりと座る。
「顔色わるいぞ、何かあったか?」
窓から入るのを手助けしてもらったフェイトに声を掛けられる。
答える気力もなく、首を横に振る。
相手は何か感じ取ったのか、無言で窓から出て行った。
「………っ!」
今までに数回ほど衝突したことはあったが、「逃げたい」などと思うことはなかった。
自分のセカイはリュートが中心だから。
でも、今度は違う。
離れたい。
あれだけ傍にいたかったのに、今は離れたい。
距離が、欲しい。
ただ、離れたい。
ガタンと窓の開く音がした。
「ったく…少しは考えろ」
「先が残り少ないヤツに言って何になる」
「誰が後先の事と言った」
びくりと声のする方向を見る。
丁度窓からリュートが入って来る所だった。
ぐっと胸が締め付けられる。
離れたいのに体が思うように動かない。
「はぁ…分かっているよ」
窓に向かってため息をついている。
気づかれたくなくて足元に目を向けた。
気づかないで欲しい、お願いだから、気がつかないで。
「気がつかないとでも思ったか?」
目じりに何か触れる。
触るな!!
突き飛ばそうとするも、寸での所でブレーキがかかる。
結局ポン、と軽く押し返す形になる。
頭の中が真っ白になった。
投稿者 ryifb4 | 返信 (0) | トラックバック (0)