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汚れを落として宿に戻っても、冷たい感覚が取れない。

寝台の端に力無くへたりと座る。


「顔色わるいぞ、何かあったか?」


窓から入るのを手助けしてもらったフェイトに声を掛けられる。

答える気力もなく、首を横に振る。

相手は何か感じ取ったのか、無言で窓から出て行った。


「………っ!」


今までに数回ほど衝突したことはあったが、「逃げたい」などと思うことはなかった。

自分のセカイはリュートが中心だから。

でも、今度は違う。


離れたい。


あれだけ傍にいたかったのに、今は離れたい。

距離が、欲しい。

ただ、離れたい。



ガタンと窓の開く音がした。


「ったく…少しは考えろ」

「先が残り少ないヤツに言って何になる」

「誰が後先の事と言った」


びくりと声のする方向を見る。

丁度窓からリュートが入って来る所だった。

ぐっと胸が締め付けられる。

離れたいのに体が思うように動かない。


「はぁ…分かっているよ」


窓に向かってため息をついている。

気づかれたくなくて足元に目を向けた。

気づかないで欲しい、お願いだから、気がつかないで。



「気がつかないとでも思ったか?」


目じりに何か触れる。


触るな!!



突き飛ばそうとするも、寸での所でブレーキがかかる。

結局ポン、と軽く押し返す形になる。


頭の中が真っ白になった。




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