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冷静になってみると…まずいことをした。
極力、ラウドの前では見せないようにしていたのだが。
「っは…」
頭から冷たい水を被り、気分を鎮めようとする。
しかし、そんなことで治まるものでは無くなっていた。
気を抜くとふいっと意識を持っていかれる。
「おい、風邪引くぞ」
声がして、またぼーっとしていたことに気がつく。
相手の顔が満月の陰になりよく見えない。
「おい、聞こえているのか?」
「え、ああ…」
満月というものは狂わせる力があるというが…本当なのだろうか。
銀髪の相手は視線が自分に向いてないことに気がつき、振り返って満月を見上げる。
「…すっかり忘れてたな」
「何を…」
「こっちの話。お前の不調の原因に心当たりがあるだけ」
急に風が吹き、濡れた体から体温が急激に奪われる。
それと同時に一気に思考が覚めた。
「………頼むから、ある程度の不調は言ってくんねぇかな」
普段の態度から想像できないルビーの輝き。
「こっちは仕事なんでな」
熱が一気に収まり、酔いが醒める感覚。
それとほぼ同時に風が止む。
「治まっ…た?!」
「いや、応急処置だ。短くて二時間くらいしか持たない」
例えるならバケツの容量を一時的に増やしただけだとフェイトは軽く説明した。
濡れた髪はそのままで宿へ戻る。
当然表も裏も開いてないので、窓から進入する。
「ったく…少しは考えろ」
「先が残り少ないヤツに言って何になる」
「誰が後先の事と言った」
何を言いたいのか分かっている。
これは自分の問題だ。
まだ、壊れている場合ではない。
「はぁ…分かっているよ」
ため息が漏れたのは、溝がどのくらい深いか検討がつかない所為だ……
投稿者 ryifb4 | 返信 (0) | トラックバック (0)