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夕食を宿で取っていた時だった。

急にクーが立ち上がる。

勢いで椅子がガタンと音をたてて倒れた。


「あれ?」


本人が不思議そうにしているのもおかしな話だ。


「座るのちょっとまった!」


同席していたユイがあわててクーの椅子を直す。

見えないクーには手助けが必要だが、運悪くスフィアにかかりきりだった。

ぐずる子供の扱いは面倒くさい。

こう二人も手間がかかるようだとは思いもよらなかった。


なんとかスフィアの食事を終わらせ、自分の分を食べようとしたときには料理が冷めてしまっていた。


「お兄さん、いろいろ大変ねぇ」

「もう少し素直になってくれればいいんだが…」


ため息がついて出る。

何かをどこかに忘れてきたような感覚がまとわりつく。


「何かお困りのようですね」

「そう見えるのか?」

「肝心なものを見失ったような顔をしてるわよ」

投稿者 ryifb4 | 返信 (0) | トラックバック (0)

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