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ふっと眠りから醒めて…意識を失う前に何があったか思い出し飛び起きる。
「んぐっ!!」
ぎりっと皮の軋む音。
冗談じゃない。
「ぐっ!…むうっ!!」
暫く暴れてみても緩む気配すらない。
ご丁寧に主要な関節を固定し、目隠しと猿轡まで噛まされている。
無傷で捕まえる気なのか。
よっぽど注意深く気配を探らないと逃げられないか。
動きを探るため意識を集中して、程なく。
複数の足音が近づいてきた。
足音はすぐ近くまで近づいて止まる。
「こいつが探していた二人の内の、術士か?」
「はっ、間違いありません」
「こいつが…術を二つも葬ったヤツか」
厄介なのに捕まった…
随分前にやりあった同類を裏で支援しているヤツららしい。
最近のひんぱんな襲撃もこの支援者の仕業か。
「ええ、もし同じ計画の行方知れずの術だとしたら一番完成に近い」
「術士がいるのなら、術もこの街のどこかにいる。急いで探せ!」
甘いな。
悪いが、何もなければ隠し通せる自信はある。
ラウドがそう簡単に勝手に出てくるわけが無いし、今は「3人」で旅をしているのだ。
やつらが「二人組」に目が向いている限り見つからない。
問題はやはり…
「術士はどうしましょうか?」
「再調教だ、早朝にその場がある街に移動する」
術を扱う「術士」に替わりはいない。
対になる術士がいれば、術は手足のように扱える。
朝までに何とかしなければ…
「了解しました、では念のため逃げられないよう『香』を焚いておきます」
言い終わらないうちに重い樹脂の匂いがする。
催眠術用の樹脂の匂い。
どこまで用意周到なんだっ!
「んっ!んんん!!」
やられる一方では気が済まない。
しかし、拘束はまったく緩まない。
「対術用の拘束だ、無駄なあがきはやめておけ」
「んぅ…んぅんんん!!」
「あまり香が効いてないようですね、薬も使いましょう」
猿轡の隙間から何か液体を流し込まれる、そして下に手を入れられ薬が流れ込む感触。
ぐらりと感覚が傾き、力が抜けていく。
「うう…んうう…!」
「手馴れているな」
「こうすると効きが早いんです、これなら朝までおとなしくなります」
力が入らなくなり、さっきまで効かなかった香がじわりと効いてくる。
思考にもどんどん霞がかってくる。
このままでは終われるか…!
投稿者 ryifb4 | 返信 (0) | トラックバック (0)