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ryifb4

901-1000

979.6

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かなり長い時間、橋のそばで待っていた。


「遅いな」

「うん…」


何回か同じやりとりを繰り返す。

その度に不安が少しずつ増えていく。

早く、戻って来て欲しい。



どのくらい待っていただろう。

消えるようなかすかな歌が聞こえてきた。


程なく、重い足取りでリュートが現れた。

返り血で前が汚れている。


ただ、様子がおかしい。


「リュート?」


声を掛けると重い動作で顔を上げた。

半分を血で真っ赤にして、向けてきた目は虚ろだった。


「…ぁ」


かすかに唇が何かつぶやいた。

それに気を取られ、リュートが崩れる瞬間を見逃す。

嫌な感じの鼓動。

慌てて駆け寄り、倒れる寸前に何とか抱きとめた。


「リュート!!」

「おい、何やらかした!」


二人で声をかけても、ぶつぶつと何かを呟き、震えている。


「…戻るぞ、どっちにしても見られるのはまずい」


フェイトが軽々と抱き上げたリュートを受けとる。

そのまま、人目をさけて小路を縫うように宿へ戻った。

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943.5

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「お、帰ってきたようだの」

「みたいだな」


「ただいま。あーびっくりした」


宿の部屋で留守番をさせていたパンドラが、フェイトと一緒に屋根の上にいる。

やはり連れて行くべきだったかなぁと反省。


「いやーすごかった、大バトルになっちゃって」

「ああ、そういえばかすかに歌が聞こえてきたのぅ」

「あの歌声はリュートだったのか」


歌と踊りの大バトルは一方的な終結になってしまったが、また機会があれば聞けそうだ。

なぜなら…


「んで、お相手がシグさんだったのには驚いた」

「は!?」

「そんでもって、よく見たらブレスさんもいた」

「なんでまたこんなところに…」


フェイトが驚いているのも無理はナイ。


「…放浪癖があるブレスまで捕まるとは…何事じゃ…」


とりあえず同族の事情に詳しいパンドラも驚きを隠せない。

同族でもかなり有名な風来坊らしいブレスさんが見つかった時点で事件のようだ。


「そうそう、シグさんからパンドラに伝言」

「む?」

「言えば解るって言うんだけど、『母体の手がかりが見つかった』だって」

「あい解った。すまないの月唯」

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943.4

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鳴り止まない拍手とともに、どこからともなくコインが投げ込まれる。

予想しないわけではなかったので、スフィアを手招きしてすこしスカートを貸してもらい集めてもらう。


「お嬢ちゃんこっちも」

「はーい」


ぱたぱたと愛らしく集めて回るスフィア。

見物客へお礼も忘れてはいない。

ふと思ったことはひとまず頭の片隅に追いやった。


「枚数をきちんと数えてから、半分に分けてくれないか?」

「うん、やってみる」


楽器を片付けながら様子を見守る。

すこし多いようで、ユイに手伝ってもらいながらも何とか数えきったようだ。



「というわけで先に戻るから、あの二人に渡しておいてくれ」

「ちょいとお兄さん、なんで私に頼むかしら」

「…あまり顔を覚えられたくないんだよ、あと受け取りを断られても困るしな」


断る時に居なければ受け取らざるおえないからな。

今までも何回かやっている。

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943.3

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聞こえるのは鈴と水の音だけ。


張り詰めた空気で激しい歌と踊りのぶつかり合い。

周りの見物客が息を潜めて成り行きを見守る。


決着は唐突に訪れた。


ぶつっという音と同時に押さえた弦に手応えが無くなる。

一瞬後に切れた弦が左頬を掠めた。


「っ!…」


急に歌が止み、あたりは噴水の音と鈴の余韻だけになる。


「悪い、弦が切れてしまった」

「残念ね、もう少し楽しみたかったわ」


歌と踊りの終焉で、辺りの空気から緊張感が一気に抜ける。

そうするとどこからともなく拍手が起こった。

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999.3

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前は居住棟であった場所は外部からの進入もなくそのままだった。


「盗人も入るような場所ではないか…」


白骨と埃が時間を物語る。

あまり感慨のある場所ではない。

むしろ静かに抉られる。


未だに整理はつかない。

二人で受けた行為も。

二人で行った行為も。



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997

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一歩歩くたび、びしゃりという音がする。


「…ここまでなったか」


一面の赤


「うん、もうそろそろ」

「そうか、近いのか…」


赤い空間の主はどこか満ち足りた表情だ。


「でも、リュートはあと一人やったら旅はお終いだって」

「話は聞いているが、何でだ?」

「すこし時間が欲しいって、みんなで過ごす時間が欲しいんだって」


時間か、おそらくスフィアのためだろう。

この先のことを考えると、たしかにスフィアがある程度成長するまで一緒にいたほうがいい。


「…スフィアもそうだけど、クーも自分のこと知らないだろうから」

「ラウド、お前はどうする」

「すこし寝る、気持ちの整理してからリュートに聞きたい事がある」


相手になにかしら揺らぎがある。

前ほどではないが、何か納得してない気配だ。

紺色の目が刃物の光を宿している。



「フェイト」

「ん?なんだ?」


「裁かれるってどういうこと?」



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943.2

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しばらくぶりに本気で歌った割には上出来かもしれない。


まばらに拍手が聞こえる。

拍手をしていたのは見物客2・3人とスフィアとクー。

いつのまにか居たユイ。

そして…


「いい歌じゃない」


鈴の音がする。

先ほど反対側で舞っていた東方の踊り子だ。

そして突然の誘い。


「即興でお願いできるかしら?」

「構わないが…すこし調律させてくれ」


日に焼けた肌にショートのプラチナブロンドがまぶしい。

ならす様にとんとんとステップを軽く踏むと、足についた鈴が鳴る

くるりと回り準備運動がおわったらしい。


「よろしいかしら?」

「ああ」


リズムをとり、かき鳴らすのは情熱の恋の歌。

ただしアレンジを入れて、若干展開が早くなっている。


「ふふっ、いいじゃない」



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999.2

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突然現れた廃墟。


始まりの場所。


終わりの場所。


出会いの場所

別れの場所


「結局ここが…」


廃墟に足を踏み入れる。

埃っぽい空気。

散らばる白骨。

ここが放置されて、何年も立っていることが伺える。


「人が入った気配がない…?」



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943.1

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荷物の奥から出てきたものは、しばらく触れていないものだった。


「これリュート弾けるの?」


携帯用の弦楽器。

調律すれば、前と変わらぬ音を響かせる。

指もそこそこ動くのでそれなりに弾けるとは思う。


「宿では迷惑だから外に行くか」

「弾いてくれるの?」

「ああ、だから行くぞスフィア、クー」




街の中心にある噴水の縁に座り、準備をする。

噴水の反対側には珍しい東方の踊り子が舞っていて、人だかりができていた。


「とりあえずあちらには負けるが、今日は路銀を集めるためではないからな」


一つかき鳴らし、歌いだす。

情念の歌、送葬歌、郷愁の歌、情熱の恋の歌…

最後に祈り・救いの歌。


散々殺してまわった奴が救いの歌を歌うとは滑稽だな…



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999.1

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冷たい雨だ。



見覚えのある手口の死体。

薄暗がりに現れた廃墟。

終わりを告げる雨音。



999人目を引き金にして、アイツは壊れる。

ひとかけらも残さず壊れるようにと。

壊れて壊すようにと。

どうせ二人で深淵に落ちるのだから。


「行くか…」



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